Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「環境の日本史」
と題されたその本は、外函こそはなかったが、やはり堅い専門書だった。
だが、この本たちの中で、唯一遼太郎と関わりのありそうなものだ。ペラペラとページをめくり、目次に目を走らせると、意を決して読んでみることにした。
難解な専門用語が氾濫する文章に、必死で遼太郎は食い下がった。ところどころに、授業で習った事象が登場してくるので、少しは自分の知識も役に立っているみたいだ。
読書の途中で急にトイレに行きたくなり、かなり気が引けたのだが、勝手にトイレを使わせてもらった。
トイレもきちんとキレイにされていて、こんなところにもみのりの日常がかいま見られる。
本を置いていたソファーの前のテーブルのところまで戻ってきて、改めて部屋を見まわしてみた。
余分な調度品など置かれておらず、すっきりとした印象だ。
チェストの上の陶器のトレーの上に、見慣れたピアスが数個置かれているが、これが女性の部屋かと思うくらい余計な飾りもない。
職員室のみのりの机は、資料やプリントの類で埋め尽くされており、逆にこれが女の先生の机かと思うくらいに雑然としているけれども…。
その反面、台所は日ごろから料理をしているのが見受けられ、調理器具や調味料など、細々(こまごま)としたものがザッと整理されて置かれている。