Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
暖かい日差しが射し込む窓辺にたたずむと、街の建物が建ち並ぶ向こう、遠くに盆地を囲む山々が臨め、近くには民家が数軒あり、川が流れている。
その川沿いには桜の並木があって、花の頃の美しい光景が想像できた。
それから遼太郎は、再び「環境の日本史」を手に取り、格闘を始める。
読み進めるうちに、多少文体にも馴れてきて、何となく内容も理解できるようになってきた。特に、戦国時代の性急な建設ラッシュによる森林伐採の問題が、屏風絵などから窺えることは、すごく面白いと思った。
授業では、覚える事が多くて大変だった日本史も、こういう風な切り口から見るととても興味深い。
遼太郎は、みのりが歴史を愛する理由が、漠然とだが解るような気がした。
「……狩野くん……。」
隣の部屋から、みのりの呼ぶ声が聞こえてきた。
遼太郎はハッと本から目をあげ、チェストの上に置かれている時計を見る。みのりが寝入ってから、既に2時間が経ってしまっていた。
「はい…。」
みのりが目を覚ましたのかと、遼太郎は返事をしながらみのりの枕辺に歩み寄る。
しかし、覗き込んでみても、みのりは何の反応もせず、寝入った時の体勢のままで、目も閉じられたままだ。