Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 遼太郎に優しい表情で微笑みかけられると、心地よいフワフワとした雲の中へ投げ出され、包まれるような感覚になる。
 きっとみのりでなくとも、あんな風に見つめられたら、誰でも恋に落ちてしまいそうだ。


 しかし 、恋愛にも女の子にも興味のなかった硬派な遼太郎は、今までそんな経験をするほど女子と関わりを持ってこなかった。

 みのりはどちらかというと 、教師だからこそ関わりを持てたともいえる。
 二俣はみのりを見つけると 子犬のように駆け寄ってくるが、遼太郎がみのりに微笑みかけたり心配したりするのも、二俣と同じ理由にすぎないのかもしれない。


――それとも…。親しげにしてるところを、見られたくない人でもいたのかな…?


 そう思った瞬間、みのりの胸にはどんよりと鈍い痛みが走る。


――教室であんな態度だったっていうことは、3年1組の子…?


 頭の中で醜い詮索をしていることに気が付いて、みのりはギュッと目を閉じた。


 いずれにしても、今日みのりは遼太郎から拒絶された。


 突然あんな態度を取るのには、何か理由があるのだと思うが、いくら考えてみてもみのりに心当たりはなく、不安の澱(おり)がみのりの心の底に溜まっていった。


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