Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
学校という場で、みのりとの距離が縮められないのなら、どうすればいいのだろう。
もう卒業までに時間もない。
言い様のない喪失感と閉塞感が、遼太郎を襲った。
それから冬休みまで、ほとんどの者が進路を決めている3年1組の面々の関心は、〝クリスマスをどう過ごすか〟にあった。
街の華やかなデコレーションも、その気分をもっと盛り上げてくれるのに、一役かっていた。
その反面、センター試験組は、年明けの試験に向けて、最後の追い込みに入っていた。
〝確実に結果を出してくれる〟という評判になってしまったみのりには、個別指導を頼んでくる生徒が殺到したので、朝の始業前に2人放課後には3人から4人、1人につき週2回程度、行うことにした。
遼太郎は登校してきた時と、放課後に部活に行く前に、しんしんと冷える渡り廊下で、みのりの真剣な表情を遠くから見つめた。
かつては遼太郎自身が、あのみのりの視線の先にいたのだが、それも随分前のことのように思われた。あれだけ長い時間、みのりを独占できたのだがら、自分がどれだけ幸運で特別だったのか、今更ながらに自覚する。
みのりとは、あの書き込みの後の一件以来、授業中に卒業レポートのことでやり取りするだけで、教室以外の場所で個人的に話をすることはなくなってしまった。