Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
やはりあの時の一瞬で、みのりは遼太郎の意思を汲み取ったらしく、必要のないことは話しかけてこない。
遼太郎は〝特別〟でもなんでもなくなり、完全に他の生徒と同化してしまった。
裏サイトの書き込みの件は、あれ以来あの話題が再発することもなく、怪しがられたり陰口をたたかれることもなかった。
あの時の遼太郎は、気にしすぎだったのかもしれない……。
みのりが自分に対して、何か誤解をしているのではないかと気にもなっていた。みのりに弁解したいと思っていたけれど、今となっては、どうやったら以前のように戻れるのかさえ、遼太郎には分からなかった。
そうやって遼太郎が悶々と悩んでいる内に、時は無意味に流れ、学校も冬休みになってしまった。しばらくは、授業でみのりに会うことも出来なくなる。
遼太郎のこのもやもやした気持ちを忘れさせてくれるものは、ラグビーだけだった。遼太郎は引退したにもかかわらず、毎日のように部活に顔をだし、現役の選手よりもストイックに体を酷使した。
冬休みの部活は午後二時から始まって、五時には終わる。
冬の夕暮れの身が切られるように冷たく暗い空気の中を、遼太郎が自転車で帰宅する途中、商店街の中央分離帯の並木を彩るイルミネーションに目を奪われた。