Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


「職員室に用事?」


みのりが声をかけてみる。


「江口っちゃんのところに、ヤボ用っす。」


 応えたのは二俣(ふたまた)というずいぶん大柄な子だった。この子は目立つので、クラスの内で一番か二番にみのりの記憶に残っている。ちなみにもう一人のちょっとズングリした男子生徒は、


――確か……衛藤くんだったよね……?


みのりは頼りない記憶を検索した。


「江口先生って、ラグビー部の顧問の?」

「その江口っちゃんの他に誰がいるっての?」


 二俣が口を尖らせたところで、みのりの脳裏に昨日の遼太郎のジャージ姿が甦った。


「ああ!もしかして、3人ともラグビー部なの?」

「ええっ!?先生、今まで知らなかったのかよー!」


 二俣は信じられないという風に、手のひらを上に向けて肩をすくめた。


「……ご、ごめんね。」


――知るわけないでしょう?!名前だってまだ覚束ないのに……。


 みのりはそう思いつつも、二俣の反応に気圧されて謝ってしまった。


 そもそも、みのりはこの春、新採用されてこの芳野高校に赴任してきたばかりだ。と言っても、今から3年前、臨時講師としてこの芳野高校に1年間勤務していたことがある。

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