Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
24 江口とのデート
薄暗い照明の中、所々にネオン管の飾りのある店内を案内され、みのりは椅子に腰を下ろした。
「澄ちゃんは、まだ来ていないみたいですね。」
マフラーとコートを脱ぎながら、予約席のプレートが置かれている席に、澄子がいないことを確認する。
「まだ、6時にはなってないからな。」
江口は腕時計をチラリと見た。
江口は、吹きっさらしのグラウンドの風を防いでくれていた、お決まりのカンタベリーのダウンのロングコートを脱ぎ、同じくカンタベリーのウインドブレーカーといういつもの姿になった。
みのりがキョロキョロと店の中の雰囲気を確かめていると、
「この店、今度組合の忘年会で使おうかと思ってて、どう思う?」
と、江口はみのりの意見を訊いた。
でも、みのりは思わず顔をしかめてしまう。
店内はテーブル席よりも、どちらかというとカウンターの方がメインで 、レストランというよりもバーやパブといった雰囲気だ。カウンターの向こう、 様々な酒が並ぶ棚にテレビが置かれ、ロックバンドのプロモーションビデオが大音量で流されていた。
「いやー、ここは…。ご年配の先生方には、どうでしょう?」
店の雰囲気にあっけにとられながら、みのりは首をひねった。