Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「そうかぁ…。じゃ、忘年会は、普通の居酒屋にするか。趣向が違ってて、 いいかと思ったんだけど…。」
江口はそう言って、がっかりしたように肩をすくめた。
「青年部の飲み会だったら、いいんじゃないですか?」
頬杖をつきながら、みのりがにっこりと罪作りな笑顔を見せると、江口は落ち着かなげに頷いた。
そこへウェイターがやってきて、おしぼりを置き、注文を聞く際、なぜかみのりの方に向かって尋ねる。
「音楽、少しうるさいですか?」
思いがけない問いに、みのりは目を丸くしてウェイターを見上げた。
「もう少しボリュームを下げて下さったら、会話しやすいですけど…。でも、音楽を聴いてらっしゃるお客さんもいるんじゃないですか?」
と、再び罪作りな笑みをウェイターにも向ける。
「それじや、音楽を変えましょうか?」
ウェイターはみのりの笑顔に気を良くして、会話を続けた。
「いえいえ、エアロスミスですよね。久しぶりに聴きました。」
「そういえば、このバンド。石原がすきだったなぁ。…とりあえず、ビールもらおうか。」
江口が口を挟むと、ウェイターは肩をすくめて、伝票にそれを書き留めた。
『石原』という響きに、みのりの胸がチクンと痛む。