Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
出されたノンアルコールのカクテルのグラスを見つめながら、みのりが溜め息をつくと、向かいに座る江口はそれに目を止めた。
「山崎さんが来ないと、がっかりかい?」
「いや、すみません。ご馳走してもらってるのに。でも、澄ちゃん、楽しみにしてたから…。」
みのりは言い繕うのに、小さな嘘を吐かざるを得なかった。
その時、江口が適当に頼んでおいた料理が運ばれて、江口の意識がそちらへ向いたので、みのりはホッと胸をなでおろす。
「仲松さんは、3年生は山崎さんのクラスにだけ授業に行ってるんだよな。」
と、江口はかいがいしくサラダをみのりの皿と自分お皿に取り分けながら、話題を振った。
「はい。それも、日本史選択者だけですよ。」
「それにしちゃ、3年と密接感があるよな。」
「週に4回も授業に行ってますからね。担任の授業よりも回数が多いから。」
この話題に、みのりは少し打ち解けて楽しそうに笑った。
「ラグビー部は、誰を教えてるんだっけ…?」
「3年生ですか?」
みのりが訊きなおすと、江口は一口サラダを頬張って頷いた。
「3年生は…、二俣くんと衛藤くん …、それと…狩野くんですね。」
遼太郎の名前を口にするだけで、自分の気持ちを気取られるのではないかと、みのりはいささか緊張する。