Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 みのりはその当時のことに思いを馳せながら、微笑みを湛(たた)えて何度も頷い た。


「だけど、江口マジックにかかって、ラグビーが大好きになった。」


 みのりがそう江口のことを持ち上げると、江口は少し噴き出して、顔を赤らめた。


「『江口マジック』かどうかは分からんけど、あいつは元々チームスポーツの方が性分に合ってたんだろう。まあ、すぐに…ハマったよ。」


 思い出しながら、江口は可笑しそうに笑った。


「それから、貪るようにルー ルを覚えるのに必死になったね。頭のいいヤツだから、すぐ習得して誰よりも詳しくなった。強くなりたいっていう意識が高いから、努力も惜しまなかった。フィジカルトレーニングも、文句一つ言わずにやってたしな。顔には『きつい、きつい』って書いてたけど。」


 そんな江口の回想を聞いて、みのりは遼太郎と個別指導を始めた頃のことを思い出していた。しんどそうな顔を見せても、決して根はあげなかった。


「今じゃ、その甲斐あって、立派なラガーマン体型ですよね。」


 ピッチに立つユニフォーム姿の遼太郎を思い描いて、みのりはそう言った。


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