Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「そういえば、下平くんは、年賀状配達のバイトするみたいですよ。この前、普通の郵便物で練習してるの見かけました。」

「そうか、年賀状配達のバイトだけは、例外で認められてるからな。衛藤はきっと、寒いから来ないんだろう。」


 江口のこの見解に、みのりは思わず吹き出した。


「衛藤くん、寒いの嫌いなんですか?ラグビー部なのに。」

「あいつは本能で生きてるようなヤツだから、寒いのも暑いのも嫌いなんだよ。雨降りのグラウンド練習だって嫌がってたしな。」


 あの無口な衛藤が、そこまで自己主張していたなんて、みのりにとっては意外だった。目を丸くして、ゴクリとペスカトーレを飲み込んだ。


「だけど、ああ見えて、結構器用なところがあってな。だから、あいつはフッカーなんだよ。」

「フッカーって、最前列の真ん中でスクラムを組むポジションですよね。」

「お!仲松さん、けっこう詳しいね。」

「任せて下さい。だてに観戦に行ってるわけじゃありません。」


 本当は遼太郎に教えてもらったのだけど、みのりは自慢げに、そう答えた。


「フッカーはそこで、ボールをかき出さなきゃいけないだろ?力いっぱいぶつかり合ってる最中に、片足浮かせてボールを出すのって、けっこう難しいんだ。それに、ラインアウトのスロワーもフッカーの仕事だから、不器用なヤツはフッカーには向かないんだよ。」


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