Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
今は泣こう――。
みのりはそう思った。
今、涙を涸らしておけば、遼太郎の前で溢れてくることはないかもしれない。
この気持ちを気取られることのないようちゃんとして、遼太郎が尊敬してくれる教師の自分でなければならない。
ややもすれば崩れそうになる心の堰の負担を軽くするためにも、今は泣いて涙を放流するしかないと思った。
ティッシュを引き寄せて取り、涙を拭うけれども、何度もそれを繰り返さなければならない。
「これじゃ、私が振られたみたい…。」
鼻をすすりながら、みのりはポツリと独り言を言った。
考えてみれば、遼太郎を想うことは、初めから振られているようなものだ。そう思えば、少しは心が軽くなる。
みのりはティッシュをもう一枚取り、鼻をかんで立ち上がると、お風呂に入る準備を始めた。