Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
薄い闇の中、遠くから木魚を叩く音と、微かにお経を唱える声が聞こえてくる。
みのりはそれで、実家に帰ってきていることを思い出した。
冬休み、個別指導に追われていたとはいえ、正月くらいは里帰りしなくては…と思い立ち、大晦日の夕方に帰り着いた。この隆生のお経は、元旦の早朝から行われる、初祈祷だ。
「ということは、これが初夢…!?」
何という初夢だろう…と、みのりは溜め息をついた。
夢の中とはいえ、自分は見慣れた遼太郎の学生服を脱がせ、その体を求めた。自分も裸になって、遼太郎の前にその身を投げ出した。
それを思い返しただけで、体がわなわなと震えてくる。
愛の行為は途中で終わってしまったけれど、それをがっかりするよりもホッとする気持ちの方が大きかった。
――江口先生が、あんなこと言うから…。
江口から体の関係を求められた時、 みのりはそういう意味で遼太郎を意識した。
それからそれは、自覚のない無意識のものになってしまっていたのかもしれないが、あの時からずっとみのりの中に潜在していたのだ。