Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 センター試験目前の切羽詰まった国立クラスに比べ、ほとんどの者が推薦で進路を決める私立文系クラスには、まともな宿題も出ていない。
 出ているとすれば、日本史の卒業レポートの資料集めくらいだ。


 遼太郎は、「環境の歴史」というあまりにも大きなテーマに四苦八苦していた。
 自分の馬鹿な態度のせいで、みのりも必要なこと以外はあまり話しかけてくれなくなり、助言もほとんどしてくれていなかった。どうやって資料を集めていいかも分からず、自分から質問すべきなのは分かっているが、それをするのにも迷いがあり、お手上げ状態だった。


 部活に顔を出すのに登校した際、遼太郎は思い切って職員室へ行ってみた。みのりがいたらレポートのことを相談しようと思っていたのと、みのりに会いたくて会いたくて、しょうがなかったからだ。


 しかし、職員室のみのりの席には、みのりはいなかった。
 遼太郎は、冬休み中の緩い雰囲気の職員室を横切り、渡り廊下へと行ってみる。すると遼太郎の予想通り、窓辺の長机に向かって女子生徒に個別指導をする、みのりの姿があった。

 久しぶりに見るみのりの横顔を、遠くから見守っているだけなのに、遼太郎の心は切なく絞られる。
 それと同時に、〝会いたい〟という渇望が満たされて、少しホッとした気持ちになる。


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