Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
それを見て、澄子は前々から思っていたことを確信した。
「狩野くん…。みのりさんのことが好きなのね。」
その「好き」が意味するところは、教師を尊敬するときに使う「好き」とは違うことを、遼太郎はすぐに悟った。
もちろん、自分の気持ちを知られたくはなかったが、事実なので否定はできない。何も言葉を返せずに、その目はいっそう切なくなる。
「それだったら、なおさら、ちゃんと話さなきゃ…。」
澄子は遼太郎に共感して、神妙な顔つきになった。遼太郎は黙ったまま、再び唇を噛む。
「狩野くんが心を込めて話すことは、みのりさんだって真心でもって聞いてくれるし、きちんと一人の女の人として応えてくれるよ?」
『申し訳ないこと』に関することに限らず、気持ちを打ち明けることも指して、澄子はそう言った。
それが心に響いた遼太郎の表情は、今にも壊れてしまいそうな心情を映した。
ラグビーボールを持つ時はとても勇敢な少年が、こんな風に繊細に人を恋する面を併せ持っている。1年生の時から遼太郎を知っている澄子は、彼のその心の成長を見て取った。
その成長に欠かせない感情を遼太郎に教えたのは、誰でもないみのりだ。心の成長に伴って、遼太郎の人間としての深みも増したような気がする。