Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 2週間ぶりに目にする愛しい人に、みのりの心は震えた。

 そしてその人は、みのりを心配し気遣ってくれている証をくれた。

 拒否されているとばかり思っていたみのりにとってそれは、とてつもない安堵をもたらし、いっそう深い想いを募らせた。

 どうしようもなく遼太郎のことが好きなんだと、思い知らされる。


――ここで、泣いてはダメ……!


と思い、我慢しようとしたけれども、みのりの目からは涙がはらはらと零れ落ちた。

 みのりは手の甲でそれを拭って、懸命に隠そうとしたが、涙は止まるどころではない。


 遼太郎を見つめ涙を流すみのりを、傍らで見守っていた澄子は、もう一度確信した。

 これは、生徒の心遣いにただ感動して、泣いているのではない。


――みのりさんも、狩野くんのことが好きなんだ…!


 それに気づいた時、花園予選の決勝戦で、みのりがあんなに泣いた理由も解った気がした。


 けれども、澄子は遼太郎に確認したように、みのりには言い出せなかった。
 遼太郎を想って泣くみのりの姿は、本当に触れたら壊れそうなほど儚げで、澄子はそっと見守ることしかできなかった。


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