Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「…私ったら、よっぽど疲れてるのかな?こんなことぐらいで泣くなんて…。」
みのりが自分の感情を押し隠そうとして、そう口を開くと、澄子はみのりを見つめて微笑んだ。
「生徒にこんなことされると、感動しちゃうよね。それに、狩野くん、みのりさんの好きなもの、ちゃんと分かってるからすごいわ!」
と、澄子はレジ袋の中のカフェラテを指さして言った。
澄子の言うように知っていたのだろうか、それはいつもみのりがコンビニで買って飲んでいたカフェラテだ。それにこのカイロは、寒い渡り廊下で個別指導をしているみのりを気遣って、購入してくれたものだろう。
遼太郎がどれだけ深くみのりを想っているか…。それらを見ただけでも、澄子には推し量られた。
「それは…、偶然だと思うけど。でも、もったいなくって、とても飲めないわ…。」
みのりがポツリと言うと、
「そう、じゃあ。私が代わりに飲んであげよっか。」
と、澄子はおどけたように言った。
みのりの涙の残る目に、驚きが加わる。するとすかさず、
「…嘘よ。」
と、澄子は笑った。
みのりの顔にも笑みが灯る。その顔を見て、澄子は少し安心した。