Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 9月に石原と別れた時の、みのりの憔悴と悲嘆を知っていればこそ、澄子はみのりに幸せな恋愛をしてもらいたかった。

 相手が遼太郎ならば、どうなのだろう。
 今のみのりを見ている限りでは、とても切なそうで辛そうだ。

 相手が生徒なのだから、それは無理もない。
 お互いが深く想いあっていることは確かだが、それが幸せへと向かうのだろうか。想いが通じ合えれば、幸せになれるのだろうか…。

 澄子は祈るような気持ちで、ただみのりを見守ることしかできなかった。



『狩野くん。今日はカイロとカフェラテを、どうもありがとう。渡り廊下は寒いので、とても助かります。カフェラテ飲んだら、疲れも癒えました。また明日から学校だね。元気な顔が見られるのを、楽しみにしています。  仲松』


 夜になって、遼太郎はみのりからそのメールを受け取った。

 何もなかったかのように、いつもの通り、みのりの言葉は優しく思いやりにあふれていた。
 その文面を見つめていると、遼太郎の顎は震えて、目には涙がにじんでくる。


 遼太郎はメールの返事を打とうとした。
 しかし、胸がいっぱいになって、「どういたしまして」の一言さえも言葉にならなかった。

 みのりへの想いが次々にあふれてきて、とうとう返事はできないままだった。






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