Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
26 卒業レポート
みのりの年明けの最初の作業は、休業の直後に行われる課題考査の採点だ。
進学校の芳野高校は、定期考査をはじめ、実力考査やこの課題考査など、毎月何かしらの考査が行われている。これに加え、年に数回の対外模試(3年生の本試組は毎週のように)が行われる。
自分も通ってきた道とはいえ、息つく暇もないテスト攻めで、生徒は疲れてしまっているのではないかと、みのりは思ってしまう。
それでも、田舎町で緩い雰囲気の進学校に通ったみのりの高校時代は、もう少し勉強以外に目を向けられる余裕もあった気がする。
歴史ものの漫画や小説を読んでは、過去の世界に思いを馳せていた。それで、将来は歴史に関係する職業に就きたいと思うようになった。大学は両親の意向もあって地元の国立大学へと入学し、大学院まで行って専門の日本史の勉強をした。
それから、どこかの博物館の学芸員か史料館の研究員になって、ずっと日本史の研究をしてその世界で生きていきたいと、本当は思っていた。
しかし、その職業に就くのは、正規教員になるよりも門が狭い。みのりの研究仲間でも、未だに就職できずにいる高学歴者がたくさんいる。