Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「レポートに使いたいっていうページがあったら、印刷しておいてね。あっ、プリンターは教卓のところのこれに、みんなの分が全部出てくるから、関係ないものを印刷してたらバレちゃうからね。」


と、みのりが言うそばから、プリンターがカタカタと動き出した。
 出てきたものを手にとって見てみる。


「広瀬すず…。こんな歴史上の人物いたかなぁ~…。」


 そうみのりがつぶやくと、パソコン室中がシーンと静まり返った。


「あっ、それ、俺の…!」


 平井がすかさず立ち上がるのと同時に、どっと笑いが起こった。


「何やってんだ、お前!」


と、ヤジが飛ぶ。


「ってか、先生。広瀬すず知らねーの?」

「前に、新垣ちゃん知らなかったくらいだから、無理もないわ~。」


 笑いと雑談で、ひとしきり教室がざわめいていた間も、遼太郎は必死になって資料を探していた。


「狩野くんのテーマは大きすぎるから、なかなか、これ!という文献にはヒットしないだろうね。」


 背後からパソコンの画面を覗き込みながら、みのりが声をかける。ピクリと肩を動かして、遼太郎が振り返った。
 目が合うと、みのりの目が優しく笑みを含む。


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