Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
そもそも、有名な歴史上の人物などをレポートのテーマにしていれば資料もふんだんにあり、レポートを書くこと自体も容易い。
現に、テーマを「徳川家康」にしている二俣は、いつでも書き始められるような状態だ。
しかし、遼太郎はそうはいかない。生徒たちが、思い思いに図書館の中に散っていった後、みのりはひたすら遼太郎のための資料を探した。
望みをかけていたにもかかわらず、みのりの能力でしても、ここでもレポートが書けるような内容の本は見つからなかった。
専門書でもあればいいのだが、市立図書館程度では、それも望めない。学校の図書室では、言うまでもない。
書架の谷間で本の背表紙に目を走らせていた遼太郎を見つけて、みのりは声をかけた。
「私も探してみたけど、狩野くんの資料は、探すのがなかなか難しいね。歴史に関する色んな本の、断片的なところを拾い上げてつなぎ合わせて、レポートにすることはできるかもしれないけど、それにはものすごい労力が必要だし、何しろ時間が足りないよね。」
そう言われて、遼太郎は溜息を吐きながら頷いた。
「テーマを変えた方がいいですか?」
とうとう遼太郎から、諦めの言葉が飛び出してきた。
二俣の様子を見ていても、書きやすいテーマに変更した方がいいのではないか…という気持ちが、遼太郎の中に湧き起ってきていたのも事実だ。