Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 これ以上想いが深まらないように顔を合わせない方がいいと思う反面、〝もう会えなくなる〟という事実を認識するたびに、みのりの心はズキンと痛みに突き上げられた。


 会えなくなってしまったら、この心は痛みに耐えかねて壊れてしまうのではないだろうか……。


 あまりの切なさに心が絞られて胸が苦しくなり、自覚もしないまま、みのりの頬には涙が伝っていた。


「……先生?」


 女子生徒の一人が、声をかけた。ハッとして、みのりはそちらに顔を向ける。


「先生、どうして泣いてるの?」


 他の女子がそういったのを聞いて、遼太郎もとっさに顔を上げた。

 みのりは言われて初めて気が付いたようで、頬の涙をごまかすように拭った。


「何でもない。目にゴミが入ったのかな?」


と、すぐに嘘と分かる言い訳をしている間も、涙は止まってくれなかった。


「どうしたの?先生?」


 優しい女の子たちが次々に声をかけてくれて、ますます涙は止まるどころではない。


「ごめんね、心配かけて。もうすぐみんなが卒業しちゃうと思ったら、なんだか寂しくなっちゃって。」


 みのりのこの言葉に、教室中がシーンと静まり返った。
 生徒たちにも、みのりの心の切なさが伝染して、しんみりとした雰囲気に包まれる。


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