Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 この予餞会の準備に時間を作ってもらっているわけではないのに、各団趣向を凝らした発表が行われている。
 その発表の中で遼太郎たち3年生は、とうとう「卒業生」と呼ばれるようになった。

 女子生徒のチアダンスや男子生徒のヒップホップダンスの発表、アカペラで歌われる女子生徒の澄んだゴスペル、男子生徒のギターによる弾き語り、などなど。
 ステージ上での華やかな発表は、遼太郎の目や耳をかすめはしたが、どれも心には留まらなかった。


 地元の名門芳野高校に入学するときは、希望で胸がいっぱいだった。

 ここでラグビーと出逢い、毎日それに明け暮れ、出来うることはすべてやり尽くすかたちで引退することも出来た。勉強もそれなりに頑張って、第一希望の大学への入学も決まっている。

 傍目で見れば、遼太郎の高校生活は最高だったと言えるだろう。

 だけど、遼太郎は晴れやかな気持ちで、卒業には臨めなかった。このままでは大きな心残りがあり、一生後悔することになるだろう。


 今日は木曜日で、みのりは初任者研修で出張している。
 仮卒をするのは明日。明日の最後の授業の後、みのりに告白しようと、遼太郎は心に決めていた。


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