Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
そのクッキーが遼太郎の手に渡るとき、みのりは心の中でつぶやいた。
――心の底から、好きよ…。狩野くん…。
他の生徒に渡したものと同じクッキーだったが、込められた想いは特別だった。遼太郎に渡されたクッキーだけが、みのりにとってはバレンタインの本命チョコだった。
自分の想いが遼太郎の手に渡ったのを確認したみのりは、寂しく微笑むことしかできなかった。
奥歯を噛みしめて、泣き出してしまいそうになるのを、渾身の力でもって我慢し、次の生徒のもとへと向かった。
一人ひとりの生徒を回って、一言二言言葉を交わし、クッキーを配り終わった時には、もう授業の終わりの時間が迫っていた。
教壇に戻ったみのりは、改めて3年1組の生徒たちを見回した。そのみのりの動きを受けて、生徒たちの視線も自然とみのりに集まる。
「私、1年部の教員だけど、この3年1組の授業に来れて、本当に幸運だったと思います。このクラスは本当に和やかで明るくて…。どんなに忙しくて大変な時でも、このクラスに来て授業をすると元気になれました。まぁ、時には居眠りばっかりされたときもあったけど…。君たちも、このクラスの一員だったことを誇りに思って、宝物にして、これからの長い人生生きていってほしいと思います。私にとっても、このクラスで授業ができたことは、一生の宝物で、忘れられないと思います…。」