Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 そこまで話した時、とうとうみのりの声が詰まった。
 シーンと静まり返った教室から、どこからともなく拍手が起こり、生徒たちも感謝を表する。


「……歴史を勉強するのは、退屈だったかもしれないけれど、今この瞬間も歴史が刻まれていると思って。自分たちが生きている今が積み重なって、歴史はできていってるの。そんなふうにして、過去の人たちが一生懸命生きた証が歴史になって残ってるのよね。それがなかったら、今ここにいる誰もが存在できなかったのよ。だから、これからはテストになんて縛られないから、もっと自由にもっと身近に歴史に興味を持っていってほしいと思います。そして、これから生きていく中で、日本史のことに触れた時には、ほんのちょっとでいいから私のことも思い出してね…。」


 クラスの皆の顔一人ひとりに、みのりは自分の思いを語りかけた。
 それでも、みのりの意識の焦点は、決して見ることはできない遼太郎にあった。


――狩野くん、私を忘れないで…。記憶の片隅に、一緒に過ごした時間を留めていてね…。私はこれからも一生、あなたを想い続けるから…。


 みのりは唇をキュッと引き結んで、込み上げてくる涙を堪え、笑顔を作った。


「それじゃ、授業を終わります。レポートは、この後回収するからね。」


「起立、礼――……」


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