Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 遼太郎はみのりの話を聞きながら、手の中のクッキーを見つめた。
 ココア生地に大きなチョコチップが入っている大きめのクッキー。きれいにラッピングがされているそれは、コーヒーショップで売られている物のように美味しそうだ。

 こんなみのりの細やかな心遣いを感じて、遼太郎はみのりをいっそう愛しく感じた。

 みのりの最後の授業の言葉は、遼太郎の心に深く沁み渡った。


 みのりと出逢うためには、どの歴史も欠くことができなかった――。
 そう思うと、今までみのりと学んだ歴史の一つ一つが、とてもかけがえのないものだと思える。みのりが歴史を愛する理由が、やっと解ったような気がした。


 黒板の前に立つみのりの姿を、忘れないように、遼太郎は瞬きさえ惜しんでみのりを見つめ続けた。

 こんなふうに席に座って、教壇にいるみのりを見つめるのは、今日で本当に最後だ。
 そして明日からは、きっとしばらく会えなくなってしまう。


――今日は絶対に、先生に告白しよう…!


 放課後、みのりに写真のコピーをしてもらってレポートを提出した後、遼太郎はみのりに気持ちを伝える決心をした。


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