Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 邦楽大会の結果は、やはり銀賞に終わった。
 でも、参加賞のような銅賞でなかったので、ひとまず目的は果たしたといったところだ。


 梅雨入り前の太陽が、じりじりと照りつける中、楽器屋さんのワゴン車に琴を積み込んで、帰路に就くことになった。


「先生~、私たち頑張ったし、こう暑くっちゃアイスなんて食べたくなっちゃうよね~。」


と、言い始めたのは、2年生の吉長だ。

 この子は、奥ゆかしい子が多い筝曲部の中ではめずらしい、ちょっとお茶目な子だ。ちょっとぽっちゃりしているのも、愛嬌を際立たせた。


「そうねぇ、頑張ったご褒美に、駅前のマックにでも行きましょうか。」


 このみのりの一言に、みんなの顔が一気にパッと明るくなった。この単純さに、みのりはちょっと驚いたが、先ほどまでの暗かった雰囲気がなくなったので、とりあえずは心を軽くした。




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