Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 曲がりなりにも、みのりは先生だ。先生相手に、いきなりそんなこと出来るわけがない。

 気持ちを落ち着けるために、遼太郎が廊下を歩いていると、今度は宇佐美と平野に呼び止められた。


「狩野くん、さっきのなんか気にすることないよ。」

「そうそう、あんなのただのハグよ。ハグ。」


 自分が気にしていることに、どうして気が付いたんだろうと、遼太郎は訝しんで立ち止まった。


「みのり先生に言わないの?」


「…何を?」


 宇佐美の質問に、遼太郎も質問して返す。


「『好きです』って、告らないの?」


「えっ…!?」


 途端に、遼太郎は赤面した。


「…何で?」


 咄嗟に二俣がバラしたのかと焦ったが、どうやらそうではなかった。


「あら!私達が気付かないわけないじゃない。」


「そうよー。男だったら、勇気だして、ドーンといかなきゃ!」


 悩みとは無縁そうな、この二人の物言いに、遼太郎は気圧された。


――…こいつら、オバサンみてえ…。


と、思いつつ肩をすくめ、苦笑いをして背を向ける。


 面白がっているのか、心配してくれているのか……周りの思惑はともかくとして、言われなくても、遼太郎はみのりに告白するつもりだ。


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