Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 遼太郎のみのりへの想いは、このまま胸の中に留めて、懐かしい思い出にできるような、淡いものではない。

 言わなければ、必ず後悔する――。それだけは、歴然としていた。


 ただ、二俣の言うように、告白しても本気にされず、取り合ってもらえなかった場合のことを、考えておかなければならない。

 遼太郎は歩く足を止め、廊下の窓から校門前のロータリーに植わる蘇鉄を見下ろして、考え込んだ。


――本気にしてもらえなくても、自分の気持ちを一生懸命説明して、解ってもらおう。…先生はきっと、ちゃんと聴いてくれるはずだ。


 そういうふうに、第一の問題には、自分の中で決着をつけた。


 そしてすぐに、第二の問題が頭に浮かぶ。
 ……既にみのりには他に好きな人が出来ていて、遼太郎の想いに応えてくれなかった場合だ。
 その可能性が思考を過っただけで、遼太郎の胸には痛みが走る。


――いろいろ心配していても、何も始まらない。もしそうだった時は、その時また自分の気持ちと相談しよう…。


 そんなふうに自分を奮い起こした時、次の授業が始まるチャイムが鳴った。遼太郎は我に返り、教室まで走って戻った。


< 682 / 743 >

この作品をシェア

pagetop