Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
遼太郎は勇気を出して、第一歩を踏み出した。
まだ、告白をしているわけではないのに、心臓が爆発しそうだ。
「話?何?」
立ち上がろうとしていたみのりは、座ったまま遼太郎に向き直った。
「いや…。ここじゃ、ちょっと……。」
遼太郎が躊躇したので、みのりの気色に少し困惑が混じる。
「それじゃ、先にレポート済ませよう。…今さら質問じゃないよね?相談か何か?」
「……そのようなものです。」
そう会話し、資料を持ってコピー機に向かったみのりを、遼太郎は席のところでとりあえず待った。
コピー機を開けて作業をするみのりの後ろ姿を見つめ、緊張で手のひらににじむ汗を、制服のズボンに擦り付けた。
写真のコピーを取りながら、みのりはとても不安になった。今日のような日に、これ以上遼太郎といて大丈夫だろうか……と。
今でさえ、自分の感情を隠すのに、とてつもない努力を要している。〝我慢〟という堰を越えて、この想いがいつ溢れ出すか分からない。
けれども、その反面、遼太郎に頼りにされ、相談されることは嬉しかった。毎日の個別指導のときのように、肩を並べて話をできることも、もう二度とはないだろう。
そう思うと、最後に訪れたかけがえのない機会を、大切にしたいとも思った。愛しい遼太郎の姿や声や話し方などの全てを、自分の記憶に刻みつけておきたいと……。