Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
みのりの胸にいろんな想いが渦巻き、涙が込み上げてきて、思わずコピーを取る手が止まってしまう。
遼太郎の側に戻るまでに、気持ちを落ち着けなければと、みのりは焦った。
「ああ!みのりさん!!」
澄子の声に、みのりはハッとした。声がする方を見ると、コートを着た澄子が走り寄ってきている。
「澄ちゃん、外出してたの?」
目に浮かんだ涙をごまかすために、みのりは目を瞬かせた。
「英語科の研究授業があって、御幸高校に行ってたの。」
「ああ、そうだったんだ。お疲れ様。」
みのりはコピーから資料を取りだし、コピーした用紙を持ち、澄子に微笑んだ。澄子は急いで帰ってきたらしく、息を荒げつつ続けた。
「それがね。その研究授業に来てたのよ。……石原先生。」
その名を聞いて、みのりの顔色がサッと変わった。
「『仲松さんは元気かい?』って訊かれたわ。この後、芳野高校にも顔出すって言ってた。」
石原がここにやって来る――。
みのりの体に、思わず震えが走った。
石原とは、あのメールを無視し続けてから会っていない。あんな酷い仕打ちをしてしまった石原に、今さらどんな顔をして会えるだろう。何よりも、石原に会って平然としていられる自信が、みのりにはなかった。