Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
――卑怯だけど、今日は逃げよう…!
みのりは、遼太郎の待つ自分の席に戻る前に、年次休暇の申請用紙を取りに向かった。
「狩野くん、ごめん。急用が出来て、帰らないといけなくなった…!」
席に戻ったみのりは、側に立つ遼太郎の顔を見る余裕もなく、席に座ってボールペンを取りだし、申請書類に必要事項を書き込み始めた。
心の準備も万端だった遼太郎は、突然のことに声もなく、困惑した。
「話って、大事なことだった?」
そう語りかけてくれながらも、みのりは書類に判を押す手を休めなかった。
「いや、あの…、大事は大事なんですけど…。」
愛の告白しようというのだから、遼太郎にとっては一大事に違いない。だけど、みのりのこの急ぎ方は普通ではない。
遼太郎が歯切れの悪い受け答えをしている間にも、みのりはその場を離れ、教頭の席へ書類を提出しに行った。
「メールか電話で話してもいい?それとも、直接の方がいいなら、また来週学校に来てくれる?3の1の授業の時間は、確実に空いてるから。」
そう遼太郎に言いながら、まだ温かい飲みかけのコーヒーを給湯室へと捨てに行き、カップを洗って戻ってきた。