Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
でも、みのりは遼太郎が心配を口にする暇もなく、逃げるように職員室から去って行ってしまった。
自分の告白は成就せず、みのりの態度にも心配が募った遼太郎は、悶々とした気持ちを抱えたまま、とりあえずレポートの作業に取り掛かった。
と言っても、写真のコピーを2枚ほど切り取って貼り付けるだけなので、なんのことはない。
2枚目の写真を貼り終わったとき、
「狩野か…?」
と、男の声に名前を呼ばれた。
遼太郎が顔を上げると、口と顎に髭を生やした男、石原が背後に立っていた。
「あ、石原先生…。お久し振りです。」
遼太郎がそう言って頭を下げても、石原の意識は別のところにあった。
「ここは?仲松さんの机?」
「はい。」
「仲松さんは?」
「急用ができたとかで、さっき帰りました。」
それを聞いて、石原はたまらずベランダへと走り出た。
職員室のベランダからは、職員の駐車場が見渡せる。しかし、 既にみのりの車はなく、そこに駐車していたと推測できる空いたスペースが1ヵ所あるだけだった。
消沈した面持ちで、石原がベランダから中へと戻ってきた。自分も同じ表情をしているとは、遼太郎自身は気付いていない。
みのりと話をできなかった男が二人、対峙する。
「仲松先生に、用事だったんですか?」
遼太郎に気を遣われて、石原は苦笑いした。