Rhapsody in Love 〜約束の場所〜

4 個別指導




 7月に入ったある日、みのりは大量の課題プリントを抱えて、3年1組の教室へと向かった。

 廊下に置いてある腰高のロッカーの上に、プリントを並べて行くと何人かの生徒たちが寄ってくる。


「みのりちゃん、これ何?」


「………。」


――『みのりちゃん』だとぉ?馴れ馴れしいじゃないの?


 そう思いながら振り向くと、案の定、仁王立ちする熊のような二俣だった。


「何って?夏休みの課題に決まってるじゃないの。早めに配ってあげたら、早めに取り組めるでしょ?」


 にっこり笑いながら答えると、二俣は悲鳴を上げた。


「マジかよー!?何?この量!!何枚あるんだよー!?」


「たったの20枚よ。本当は、問題集1冊してもらおうかと思ってたんだけど、減らしてあげたの。さあ、そっちから1枚ずつ取って、これで綴じてね。」


 みのりは、20枚目のプリントのところでホチキスを掲げて、その場に置いた。


「ええーっ!?みのりちゃんの鬼っっ!」


 二俣が拳を二つ口に添えてそう叫んでいると、ぞろぞろと生徒たちが集まってきて、順番に課題を綴じていった。




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