Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
自分は石原には到底およばないけど、石原のようになりたい――。
遼太郎は石原と接するとき、いつもそう思った。そして、そんな風に尊敬している石原から誉められれば、遼太郎もとても嬉しかった。
「ありがとうございます。」
遼太郎が頭を下げ、そう礼を述べると、
「うん、頑張れよ!」
と、石原は遼太郎の背中を叩き、男でさえ惚れてしまいそうな笑顔を、遼太郎にくれた。
石原のような男になれれば、みのりの言う〝いい男〟になれたと胸を張れるのだろうか。
今そうなれていたら、なんの気負いもなくみのりに告白できるのに…。
1年部の学年主任と話す石原の背中を見つめながら、遼太郎はそう思った。
澄子の淹れてくれた紅茶の香りが湯気とともに漂い、ホッとみのりの心を緩ませた。まだ冷えている指先を、紅茶のカップに当てて温める。
みのりは一口それを口に運び、深く息を吐いた。
職員室から逃げ出したみのりは、途中の道でも石原と顔を合わせないようにするため、御幸高校とは反対側へと向かった。。
それから、石原の家とは逆方向へと車を走らせ、県境付近までドライブして時間をつぶした。