Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 その後も、石原がアパートまで来るかもしれないので帰るに帰られず、澄子のアパートへと逃げ込んできたのだ。


「やっぱりあの後、石原先生、職員室へ来てた。みのりさんの席のところで、狩野くんが何かしてたでしょ?石原先生、みのりさんがいないものだから、狩野くんと話をしてたわ。それはそれで、楽しそうだったけど。」


 澄子は、みのりが不在のみのりの席での光景を報告してくれた。
 遼太郎がいた時に石原が来たということは、まさに間一髪で逃げられたということだ。


「狩野くんは、石原先生と話をしてた?楽しそうに?」

「うん、そう見えたけど。」


 それを聞いて、みのりは心を少し軽くした。
 自分がいなくなったことで、遼太郎は尊敬する石原と話をすることができた。遼太郎がいてくれたおかげで、石原の気持ちも少しは紛れただろう。


 けれども、両者に対するみのりの申し訳ない気持ちは、未だその胸にずっと渦巻いていた。


 石原に対しては、本当に酷いことをしていると思う。
 一方的に無視し続けられる石原の心を思いやると、みのりは自分を消し去りたくなるほどの罪悪感で、息もできなくなる。自分を想ってくれている人に、こんな仕打ちをする自分は、もう誰にも愛される資格はないと思った。


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