Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
遼太郎に対しては、話を聞いてあげられなかった申し訳なさがあった。
彼の声の響きには、思いつめた悩みのようなものが感じられた。メールや電話ではできない話ならば、大事なことなのだろう。
――急ぎの用でなければいいけど…。
と、みのりは祈るような気持ちで遼太郎を思いやり、彼を想う切ない痛みが通り過ぎるまで、黙って目を閉じ耐えた。
前に付き合っていた人と、今好きな人が遭遇する……。
そんな状況になってしまったみのりの心の内の複雑さを思い計って、澄子はみのりの様子を見守った。
「みのりさん、今日は泊まっていくよね?」
と、気を取り直して澄子が尋ねる。済まなそうに、みのりが肩をすくめ、
「いつも、ごめんね。澄ちゃん…。」
と謝る。すると、澄子は軽快に笑った。
「寂しい女同士。いっそのこと一緒に住んじゃう?」
「今から?澄ちゃん、今度の異動で学校変わっちゃうでしょ?」
「そっか。私、今度異動なんだった。」
布団の準備をしながら、澄子は今更ながらに自分の境遇に気が付いていた。
4月になったら、澄子も芳野からいなくなる。何かあった時に、こんなふうに頼れる親友もいなくなる。
みのりは言いようのない寂しさに襲われたが、これからは何があっても自分で何とかできるように、「強くなろう…!」と、心に言い聞かせた。