Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「遼ちゃん。その調子じゃ、まだみのりちゃんに告ってないな?」
もうラグビーをしているわけでもないのに、大きな弁当を食べながら、溜息を聞いた二俣が、上目づかいに遼太郎を見た。
二人は自動車学校でも一緒に、肩を並べて弁当を食べている。
二人だけではない、芳野で唯一のこの自動車学校には、芳野の仮卒を迎えた高校3年生でごった返していた。
「俺の勘では、仮卒の日に告るかと思ってたんだけどな。」
相変わらずの二俣の動物的な鋭い勘に、遼太郎は閉口する。再び、溜息を吐いて返事の代わりとした。
「なんなら俺が、みのりちゃん、呼び出してやろうか?」
二俣のその提案に、遼太郎は目を剥いた。
「いや、いいよ、遠慮しとく。」
「なんでだよ。もう時間がないぜ?」
「先生を呼び出して、『大好きだ!』って、また抱きつく気かよ?」
遼太郎は、まだあの仮卒の日の出来事を根に持っていた。
それに、告白するならば、他に誰もいない、みのりと二人きりのところでしたかった。
「ふふん。遼ちゃん、さては俺らのことが羨ましかったんだな?」
「う…、羨ましくなんか…!俺だって、先生を抱き締めたことならあるし…。」
遼太郎は二俣に挑発されて、秘密にしていたことを口にしてしまった。