Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「ご苦労様、頑張って。」
みのりが気の毒そうにそう声をかけると、古庄は羨ましそうな顔をして、
「仲松ねえさんは?」
と、みのりの係り分担を訊いた。
「私は掲示係と、今日は来賓の接待よ。換わってあげようか?」
それを聞いて、古庄はやぶへびとばかりに肩をすくめる。
「遠慮しときます。駐車場係が気楽でいいや。」
女性教員の中には、お決まりのように女性職員を接待係に割り当てることに、苦言を呈する人もいたが、逆に寒い中で大変な仕事をしてくれる男性職員もいるのだ。
それに、古庄のような若くて爽やかなイケメン教師から自動車の誘導をされれば、保護者の母親たちも悪い気はしない。
みのりもすぐに1階の事務室に降りて、事務員とともにお茶の準備をし、来賓が到着するたびにお茶をお出しする。
卒業式が始まるまで、みのりは忙しく動き回り、来賓が体育館へ入る少し前に、みのりはそこへ向かった。
体育館は、申し訳程度にストーブが焚かれているのと、1000人近くの人間を収容しているからか、昨日の準備の時よりか幾分暖かい。
一般の職員席は席次など関係なく、下座から埋まっていく。みのりもいつもは後ろの方の下座へ座るのだが、今年はもう上座の方しか空いていなかった。ただ、こちらの方が卒業生はよく見える。