Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「これ、出し忘れてました…….。」
おもむろに毎日出している課題のプリントを、1枚差し出す。
「……えっ、ああ、提出してない分があったのね。」
みのりは、さっと目を通し検印を捺して閻魔帳にチェックをしてから、遼太郎に手渡した。 遼太郎は顎を突き出すような礼をして、その場を去ろうとする。
「ちょっと待って!狩野くん!」
みのりはとっさに、遼太郎の腕に手をかけて引き留めた。
ちょっと触っただけだったが、みのりはハッとしてしまった。見た目は細い遼太郎の腕は、鍛え上げられているとすぐに判る精悍な筋肉で被われていた。
その感触に、みのりは思わず自分が何を言おうとしていたのかを忘れてしまう。
戸惑うような遼太郎の視線とぶつかって、みのりは我に返った。
「プリント1枚提出させるために、わざわざ呼び出すわけないでしょ?ちょっとこっち来て。」
と、遼太郎の背中を押して、騒がしい職員室を出た。
渡り廊下の長机のところへ来て、遼太郎に座るように促した。
一旦座ったものの、やはりここは暑いので、みのりは立ち上がって開けにくい窓を開けようとした。すると、遼太郎はみのりの意図を察して、先に手を伸ばして窓を開けてくれる。