Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
――…今、言わなくては…!
そう遼太郎が確信した時、みのりが職員室へと足を向け、行く先に立つ遼太郎の姿を捉えた。
息を呑んだような表情をした後、いつものように柔らかく微笑みかけながら、遼太郎の方へと歩いて来る。
「やっぱり、狩野くんってモテるんだね。」
いきなりそう切り出されて、遼太郎は面食らった。高まった緊張に声が出ず、代わりに疑問を顔に書いた。
「ボタンが二つもなくなってる。」
みのりが面白そうに疑問に答えると、遼太郎はとっさに自分の制服を見下ろす。〝第2ボタンの悔い〟があるので、思わず遼太郎は話題を変えた。
「…あの、仲松先生にも謝恩会に来てほしいって、みんなが先生を待ってます。」
遼太郎も歩み寄ると、二人は渡り廊下の途中で足を止め、向き合う形となった。
「今から?まだやるの?」
というみのりの質問に、
「さあ?でもさっきお菓子が出てたから、まだやるんじゃないかと…。」
と、遼太郎は首をひねる。
その仕草を見上げて、みのりは嬉しそうに明るい表情になった。
「そうだ。狩野くん、卒業おめでとう。大学生になっても頑張ってね!」
みのりはそう言って、掲示物を抱えていない方の右手を差し出した。