Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
遼太郎はその手を緊張した目で見つめ、
「…あ、ありがとうございます。」
と、みのりの手に自分の右手を重ねる。
冷え切ったみのりの手に触れた瞬間、一気に胸の鼓動が速く大きくなる。
みのりは握った手を数回上下に振り、その力を緩めて離そうとしたが、遼太郎はみのりを逃がすまいと、改めて力を込めて手を握りなおした。
驚いたようにみのりが目を上げ遼太郎を見つめると、視線は自然に絡み、遼太郎は意を決して息を吸い込んだ。
「俺、先生のことが好きです。」
緊張のあまり、自分の声ではないみたいだった。
みのりは驚いた顔のまま、数秒間遼太郎を見つめ、目を瞬かせる。
思いもかけない遼太郎の言動の意味を、みのりはどう解釈していいのか分からなかった。
心を閉ざしていた分厚い氷に、かすかな亀裂が入る。
けれども仮卒の日に、二俣たちから抱きしめられたことを思い出して、遼太郎もそれと同じことをしようとしているのだと思った。
「ありがとう…。そう言ってもらえて、嬉しい。他の生徒の前ではいえなかったけど、狩野くんは私の教えた生徒の中で、一番優秀な生徒だったよ。」
と、みのりは頷きながら満ち足りたように笑って、もう一度握られた手を上下に振った。