Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「…どうして、言えないんですか?」


 遼太郎がそう尋ねると、みのりの目にはもっと涙が溢れ、何かに耐えているように引き結んだ口元が震える。


「……だって、狩野くんは…、生徒だから…。」


 そう言うと、みのりは自分の中から溢れてくるものを押し止めるように、ギュッと目を閉じた。涙が、長いまつ毛の先からほとばしって落ちる。


 自分が生徒だから言えない想い――。


 それは、生徒としてではなく、自分を想っていてくれていることだと、遼太郎は直感した。


 想いが通じ合っていると確信した瞬間、遼太郎の全身に震えが走った。
 どうしようもないほどに、みのりへの愛しさが募ってくる。

 何も言葉にならずに、目を伏せたみのりへと手を伸ばし、その髪を撫で頭をそっと引き寄せた。



 優しく遼太郎の胸元へと抱き寄せられたとき、みのりはそれが現実だと未だに信じられず、戸惑いが先にたった。

 涙にぬれる頬が、遼太郎の学生服の肩にに押し付けられる。


「…狩野くんの制服が、汚れちゃう…。」


 みのりが胸元でつぶやくと、遼太郎もみのりの髪に唇をつけて囁いた。


「大丈夫です。…もう、着ないから…。」


 明日から遼太郎は、もう制服を着ることもなければ、この芳野高校の生徒でもなくなる。


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