Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「でも、無理にさせるのは主旨に反するから、この話はこれでおしまい。時間を取らせてしまって、ごめんね。」
みのりは椅子から立ち上がって、続いて遼太郎も立ち上がるのを待った。平然を装ってはいたが、みのりの心の中の落胆は大きかった。
その時、振り返りながら、側を通りすぎる生徒たちがいた。二俣と衛藤だ。遼太郎が何の用でみのりに呼ばれたのか、気になっているようだった。
みのりがそちらの方を見て手を振ると、二人ともペコリと頭を下げた。
「今から部活よね?二俣くんと衛藤くんが待ってくれてるのかな?待たせちゃって悪かったって、伝えといてね。」
と、みのりが声をかけても、遼太郎はそこから行こうとしなかった。
「……?」
みのりは、もう一度遼太郎の顔を凝視する。すると、日に焼けた顔をますます赤くして、遼太郎が遠慮がちに言った。
「あの、先生……。やります。」
「え…?やる?」
「はい。」
「個別指導、受けてくれるの!?」
「はい。」
遼太郎が二度ほど頷くと、みのりの表情がパアッと明るくなった。
「ああ!うれしいわ!!狩野くん、ありがとう!」
みのりは思わず、遼太郎の両手を取って揺さぶっていた。