Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「一緒に頑張ろうね!」
満面の笑みのみのりにつられて、遼太郎も白い歯を見せた。
「あの、先生……。」
遼太郎が恥ずかしそうに、握られている両手に視線を落とす。
「わわっ!ごめん……!」
みのりも顔を赤らめて、手を引っ込めた。
軽く会釈をして、遼太郎は二俣と衛藤の方へ歩き出した。その夏服の白い背中に、みのりが声をかける。
「狩野くん、また連絡するからねー。」
遼太郎は振り返って照れた赤い顔を見せ、頭を下げた。
それから、そんな照れている自分をごまかすように渡り廊下を走り、ジャンプして衛藤の背中に飛び付いた。
「うおぅ!遼ちゃん!ビクったー!!」
衛藤の低い声が響いて、3人の姿は階段を降りて見えなくなった。
夏休みに入ってすぐに、吉田高校のある街では、祇園祭が行われる。
京都の祭りまでとはいかないが、地域を挙げての盛り上がりで、生徒たちの中には山鉾の牽き手として活躍する者もいる。
みのりが3年前に勤務していた時は、教員採用試験の直前で、楽しもうという気にさえならなかったが、晴れて採用された今年は、澄子を誘って山車が出る界隈に行ってみようかと思っていた。