Rhapsody in Love 〜約束の場所〜





――私しかいないなんて、嘘だ……!


と、みのりは心の中で泣きそうになりつつも、


「はぁ……、分かりました。」


と、了承してしまっていた。


 頼まれたら、嫌と言えない。
 それが自分の仕事を一層忙しくするのは解っていたが、みのりは断るのが苦手だった。同僚の中には、面倒な仕事を巧く躱して楽をしている者もいたが、みのりの場合、その性格を利用されていろいろと頼まれてしまう。

 それでも、他人の役に立てるは嬉しかったし、頼まれたからには信頼を裏切らないように頑張るのは楽しいと思えた。

 ……浴衣を着て、祭りの夜にそぞろ歩く夢は、儚くなってしまったけれども……。



 祇園祭の日は好天に恵まれ、大勢の見物客でにぎわっていた。この調子では、今日は芳野高校の生徒たちも、たくさん祭りに繰り出すだろう。


 『補導』とは言っているが、悪いことをしている生徒を見つけ出して、捕まえるのが目的ではない。
 腕章を着けて見張っている教師が街にいると知らしめるだけで、羽目を外す生徒の抑止につながるし、もし生徒がトラブルに巻き込まれる事態になった場合も、迅速に対応できるというわけだ。


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