Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
『明日の夕方からなら会えそうだけど、予定はどう?』
そのメールの短い文面を見た瞬間、みのりの胸が、ひとつ大きく脈打った。
――石原先生……!!たとえ予定があったとしてもキャンセルして、会うに決まってる!!
こうやって石原から連絡をもらうのは、数ヶ月ぶりのことだった。このチャンスを逃すと、次はいつ会えるのか分からない。
みのりは自分の予定の確認もせずに、すでに返事を決めていた。すぐにでも返信をしたかったが、さすがに会議中なので終わってからすることにした。
しかし、みのりはソワソワとして、うわの空。後半の会議の内容はほとんど頭に入ってはいなかった。
次の日の土曜日、 みのりのアパートの近くまで石原は迎えに来てくれた。
みのりが石原の車の助手席に乗り込むと、
「いい所にアパートを借りたね。」
と、石原は微笑んだ。
「はい。日当たりもいいし、横は川だから、ちょっと前まで河原の菜の花や土手の桜がきれいでしたよ。」
みのりは、ぎこちなく笑顔を作りながら応える。本当に久しぶりに会うので、意味もなく緊張していた。
「うん、それもいいけど。三年前の君のアパートは学校に近くて、いつ生徒に会うかとヒヤヒヤしてたからね。」
石原は、以前みのりが芳野高校に勤めていた時の同僚だ。同じ分掌で一緒に働いている内に、想いが通じ合うようになり、こうやって時間を作っては会っている。