Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 腕章をして立つみのりの姿は目立つのか、チラッと二俣が視線をよこした。誇らしげな顔で済ました態度を取るものだから、みのりは二俣を「かわいい」と思いつつ、笑いをもらしてしまう。

 その後、担当場所をぐるぐると、裏通りを重点的に巡回したが、取り立てて問題もなかった。

 何人かの生徒に出会って、「早めに帰りなさいよ。」と声をかけ、予定時刻の午後9時になったので古庄と学校へ戻り、みのりの長い一日が終わるかに見えた……。



 進学校である芳野高校では、3年生の夏休みの補習は、16日間もある。
 その毎日の補習が始まる前の1時間を、みのりは遼太郎の個別指導の時間に充てた。

 9時から補習が始まるので、少し早いが8時に遼太郎を呼び出していたのに、あろうことか、みのりの方が遅刻をしてしまった。


 昨日、祇園祭の補導の後、古庄と食事に行ったら、生活指導主任やその他補導に行っていた教員たちが合流し、宴会となってしまった。
 飲めもしないのに、みのりははしご酒に付き合わされ、結局帰宅したのは日付が変わってからだった。

 補導で歩き回った疲れも重なって、今朝は思いっきり寝坊をしてしまった。


 みのりが急いで階段を駆け上がると、人気のまばらな職員室の入り口に、遼太郎が立っている。



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