Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 遼太郎は登校してきても、肝心のみのりがいないので困っていたのだろう。


「ごめーん!狩野くん。すぐ行くから、あっちで待っててくれる?」


 みのりは遼太郎の側を通り過ぎる時、渡り廊下の長机を指差した。
 それから、自分の机に荷物を置いて、演習問題とノートと筆記具を持ち、みのりは遼太郎が座る傍らへと走って戻ってきた。


「ごめんね、私の方から言い出してるのに、遅れちゃって……、ホントにごめんなさい……。」


 息も絶え絶えに、みのりが何度も謝るので、遼太郎は困り顔で首を横に振った。

 遼太郎の隣へ腰かけた瞬間、みのりの身体中から汗が吹き出す。


「おはようございます。あー、暑いねー。」


 タオルハンカチで顔の汗を拭きながら、みのりが微笑む。


「おはようございます。いやまだ、涼しいですけど。」


と、遼太郎は本当に涼しい顔で笑うと、この突っ込みにみのりもニッコリ笑った。


「そうよね、まだ朝早いものね。あー、でも走ったから暑い。汗が……。」


と、みのりは首の後ろに腕を回し、首にへばり付く髪をかき上げて、うなじの汗を拭いた。

 みのりのこの仕草を見た遼太郎は、息を呑んでピクッと身を固くする。


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