Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「昨日は祇園祭だったね。」
まだ落ち着いて勉強という感じではないので、みのりはちょっと時間を置くために雑談を始めた。
「お祭りに行った?彼女とか連れて。」
そんなみのりの問いを聞いて、遼太郎は椅子から滑り落ちそうになった。
「……い、行ってないし、彼女もいません。」
遼太郎が真っ赤な顔になったので、みのりはもっとからかいたくなる。
「なんだぁ、行かなかったの。でも、彼女がいたら絶対行ってたよね~?」
からかわれていることを感じ取って、遼太郎もムキになって反論する。
「いても、どうせ行けません。部活があって。」
「あら、部活?でも、昨日二俣くんは山鉾を牽いてたわよ?」
「ふっくんは、昨日は特別に休みをもらったんです。」
みのりは「成る程」というふうに頷いてから、おもむろに演習問題のプリントを遼太郎の前に広げた。
「……先生は古庄先生と祭りに行ったんですか?」
不意に出てきた遼太郎の逆襲に、みのりは目を丸くして遼太郎を見つめた。そして、無意識に、
「………何で?」
と、呟いていた。
「昨日、部活が終わって自転車で帰ってる時、若宮の郵便局のところを、二人で歩いてるのを見ました。」
遼太郎が誤解しているらしいのが可笑しくて、みのりは忍び笑いをした。